忠犬カノジョとご主人様
1人暮らしをしたいと親に言ったけど、通える範囲なのに何を言ってるんだと親に怒られて結局実家ぐらし。
埼玉よりの東京なので、終電が皆よりすこし早いから、最後まで残れない。
二回乗り換えて、やっと地元の最寄り駅についた。
この駅で降りる人は十人ほどしかいなくて、静かなホームの階段をゆっくりとくだった。LINEには先ほどの飲み会の写メが沢山送られてきた。
今日の飲み会でもソラ先輩の話が出た。一体彼と出会える日はいつくるのだろうか。
あの情報だけだと、顔以外ソラ先輩のなにが魅力的なのかよくわからなかった。
そんな風に疑問に思ってると、今度は姉ちゃんからLINEがきた。
「は?」
内容はアイス買ってこい、だった。
何故この女はいつも命令口調なのだろう。もうとっくに慣れたし、もし買って行かなかったらもっと面倒なことになると俺はよくわかっている。
そう言えば前の彼女もこんな感じだった。最初は猫被って色々尽くしてくれたけど、半年も過ぎたら豹変した。アイス奢ってプリン買って食事代は多く払って。
正直高校生の俺には精神的にも金銭的にもだんだんそれがキツくなって行った。
そして思った。
女はあざとくて、イケメンと奢られることが大好きな恐ろしい生き物だと。
俺はそれ以来彼女を作っていない。
尽くすタイプの女の子なんて、もう幻想なんじゃないかとすら思っている。
「いらっしゃいませー」
俺は真っ黒な気持ちのままコンビニに入った。
駅から一番近いコンビニ。このコンビニの店員のシフトを把握できるんじゃないかってくらい通っている。
俺はハーゲンダッツバニラ味と自分の分のマンガ本を買って、レジに持って行った。
「880円です」
あれ。
この時間帯はいつも化粧の濃いおばさんのはずなのに。
いつもより高い声に顔を上げると、可愛いお姉さんがレジに立っていた。
柔らかく透明感のある茶髪を、後ろで一つに束ねて、大きすぎないくりっとした瞳の近くには、泣きぼくろがある。
俺はなんだがドキッとしてしまって、慌ててそれを隠すように千円を出した。
「千円お預かりいたします。120円のお返しです。袋お分けしますか?」
「あ、いえ大丈夫です」