【完】私と先生~私の初恋~
それからは手紙のやり取りはなくなり、かわりに数日に一度程度のメール交換になっていた。


本当は毎日でもメールをしたかったが、迷惑になる事を考えて、極力控えるようにしていたのだ。


細く長くやり取りを続けてもうすぐ高校2年になる春休み前日、先生から思いがけない知らせが届く。



「移動が決まりました。また〇〇小に戻ります。」


高校2年が始まる。


先生はこちらに戻って来たが、すぐに会う事は無かった。


会って話がしたい、声が聞きたいとは思ったものの、なんとなく会いに行く口実が出来ずにいたのだった。


それでもメールだけは続いていた。


そんな感じで日々は過ぎ、その年の9月。


私がずっと歌を習っていた事を聞きつけた高校の先生から、文化祭の催しで歌ってみないか?とのお誘いがあった。


校内でも歌が好きな生徒を集め、楽器の得意な先生達の伴奏に合わせて、
生徒が好きな歌を歌うという企画。


最初こそ断ったものの、友達からの何で引き受けなかった?の声や、打診してきた先生の猛プッシュもあり、結局私は1曲限定という約束で引き受けた。


引き受けたは良いものの、何を歌って良いのかが解らない。


面倒な事に巻き込まれたな…と思いつつ、私は友人達に歌って欲しい曲は無いかを聞いてみた。


様々な歌が提案されたが、その中でも特に仲の良かった友人のリクエスト、Fayrayのtearsという曲を歌うことになった。


女子高生の大好きな、切ないラブソング。


初めて聞いた曲だったが、何より歌詞が甘酸っぱくてなんだか恥ずかしく、歌う約束をした事をちょっとだけ後悔した。


文化祭も間近になった時、私はそういう経緯で初めて人前で歌を歌うことになったと、関岡先生にメールをした。  


先生からは、絶対に見に行くと返事があった。


私は先生にラブソングを聞かれることが物凄く恥ずかしくて、やっぱりちょっと後悔をしたのだった。
< 14 / 88 >

この作品をシェア

pagetop