【完】私と先生~私の初恋~
虐められている私が笑いものになるのは見えていた。


めげずに学校に通っていた私でも、本気で休もうと思った、その時は。


緊張で冷や汗はダラダラ、後悔を心の中でグチグチ呟いているとあっという間に私の番。


名前を呼ばれ、ピアノの脇に立つと、もうその瞬間からクスクスと笑い声が聞こえてくる。


途端に息が苦しくなった。


きっとこいつらは私が歌いなおしになるのを想像しているんだろうな……。


キモイ歌声で自分らを笑わせてくれることを期待しているんだろうな…。


そう思ったら無性に悔しくなって、怒りをバネにしたのか、羞恥心は軽く吹き飛んだ。


あまりの緊張にキレ状態だったと思う。


絶対に歌いなおしなんてするもんか!


その気持ちを胸に、声は大きく、歌詞はハキハキと全力で歌い上げた。


「コイツ何本気で歌っちゃってるわけ?」という、クラス大爆笑の中、一人だけ拍手をしてくれる人がいた。


──関岡先生だ。


「素晴らしい!ものすごく上手でびっくりしました」


先生がそういうと、爆笑はピタッと止まった。


クラスの女子たちはあっけにとられた感じで、「え?え?」と私と先生の顔を交互に見比べていた。


一方の私は、やはり爆笑されたという気持ちで、顔から火が出るほど恥ずかしくてしばらく下を向いている。


ちょうど、チャイムが鳴って音楽の授業は終わった。


混乱してどうしていいのかわからないまま、音楽室からでようとすると。


私は関岡先生に呼び止められた。


「本当に上手でした。恥ずかしがらないで、自信を持ってください。」


褒められてうれしかったのと、初めて間近で見る関岡先生の顔と。


なんだかよく分からない感情でしばらく胸のドキドキは収まらなかった。
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