【完】私と先生~私の初恋~
「一枚で足りますか?」


「はい?」


「タオル…」


「あぁ、はい大丈夫です、足ります。」


私が慌ててうなずくと、先生はニコッと笑って今度は浴室の扉をあける。


蛇口を捻ってしばらく手を流水にさらし、うんっと小さくうなずくと、


「どうぞ」


と言って、廊下に戻った。


「僕、またあっちにいますから。汚れ物はハジッコにでも置いといて下さい。」


私が頷くと、先生はまたニコっとして奥の部屋に戻っていった。


浴室で足と顔を洗うと、頭がシャッキリしていく。


冷静になってくると、ここがどこだか実感が沸いて来る。


ここ、先生の家だ…


私は色々と恥ずかしくなり、何故か慌ててお湯を止めると、急いで足と顔を拭いた。


使ったタオルをさっき畳んだ服の上に置き、洗面所の端に移す。


スイッチを探して電気を消すと、何故かそーっと奥の部屋の扉の前に移動した。


どうしていいかわからず、ノックをする。


すぐに扉が開いて、先生がどうぞ…と部屋に招きいれた。


「お邪魔します…」


小さく言って部屋に入る。


広いリビングダイニング。


小さな座卓、少しだけ大きなテレビ、二人がけの黒くて背の低いソファと、部屋の端に電子ピアノ。


広さの割りに物が少なく、綺麗というよりはガラガラと言った方がわかり易い部屋だった。
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