【完】私と先生~私の初恋~
児童相談所…その言葉を聞くと、頭がグラグラした。


「ハッキリ言います。貴女がされたことは性虐待です。どう考えても貴女の新しいお父さんは異常です。」



ずっと頭の中で否定し続けていた言葉を言われ、私は堪らずうつむいた。


「明らかに虐待…いや、それ以上の酷い事です。早苗さんはもうすぐ18歳ですがまだ高校生なので、きっと助けてくれるはずです。」


「……」


「他に身内も、頼る所も無いとなると、そうするのが一番最良だと思うのですが…」


私はブンブンと首を振った。


「…嫌です。」


「でも、このままじゃ貴女が…」


私は遮るように話し続けた。


「嫌です、絶対に嫌です!あの男に何をされたか話さなきゃいけなくなりますよね?私が保護されたら、地元の人たちにも何をされたかバレますよね?」


「でも…」


「嫌です、そんな事私には耐えられません!やっと友達も出来て、やっと普通に過ごせているんです!それを壊してしまうような事、私には出来ません!」


堪えきれず涙が溢れてくる。


あの家は確かに怖かった。
けれどもそれ以上に、小さな田舎の噂話の方が怖ろしい事を、私は知っていた。


この件が表沙汰になれば、実際は未遂で終わった事でも、私は義父に性虐待された女として周りから見られてしまう。


そうなるともうこの町には居られなくなる。友達にも一生会えなくなる。


私にはそれが耐えられなかった。


先生は悲しそうな顔をして、小さく溜め息をついた。


「……ですよね。」


ぽつっと呟く。


「………ごめんなさい。」


滅茶苦茶な事を言っているのは、十分すぎるほど理解していた。


それからまた、長い長い沈黙。


私は居た堪れなくなって、もう一度小さく「ごめんなさい。」と呟いた。


「自分の…」


ずっと黙っていた先生が、下を向きながら話し始めた。


「…自分の身は自分で守れますか?」


私は「え?」と聞き返した。
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