【完】私と先生~私の初恋~
リビングに入ると、母はいつものように酒を飲みながらテレビを見ていた。


「お母さん。」


母がかったるそうに「ん」と返事をする。



「…就職、ダメになった。」


母の後姿が一瞬固まる。


でもその次の瞬間には物凄く嬉しそうな笑顔で、バッとこちらに振り向いた。


「あ~そお~?残念だったねぇ~困っちゃったね~アハハハハ」


妙に上機嫌だ…何かがおかしい。


私はハッとして自室に駆け上がり、机の引き出しを開けた。


「………」


入れていた筈の、2社から渡された封筒と担当者の名刺は、綺麗に無くなっていた。


様々な点が繋がる様に、私の疑問が結ばっていく。


私は脱力していく体を引きずる様に、階段を降りた。


「…お母さん。」


母は鼻歌を歌いながら、「なぁに?」と笑顔で返事をする。


「…何したの?私の部屋に勝手に入って、何をしたの?」


母が笑顔のまま固まる。


「机の引き出し開けたよね?中に入ってる物、どうしたの?何をしたの!!!」


私は思わず怒鳴りつけていた。


長いこと忘れていた怒りの感情が、ジワジワと沸いて来る。


母はしばらく目を右往左往させていたが、急に顔を歪ませ、何やら泣き叫びながら私にしがみついてきた。


「だってぇ!だってあの紙なんて書いてあったと思う!?」


「紙?」


「そうだよ!あの紙!!!!!!寮って書いてあったんだよぉ?
寮って寮でしょぉおお!?」


意味が解らない。


「だったら何なのよ!!!」
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