【完】私と先生~私の初恋~
「…ひとつ?」


「アハハ、まぁいいや。…さ、帰りましょ。」


先生は体をゆっくり離すと、私の手を握った。


そして地面に放り出されていた私の鞄を拾うと、そのまま手を引き歩き始めた。


車に戻ると、先生は珍しくメガネを掛けた。


普段はメガネが汚れた時すぐに拭けないのが嫌だからと、先生はコンタクトをしている。


コンタクトにメガネ…?


私が不思議そうに先生を見ていると、それに気がついた先生は恥ずかしそうに頭をかいた。


「…さっきの公園で、コンタクト落としちゃったみたいで…」


「え?じゃあすぐに探しに行かないと…どの辺に落としたんですか?」


先生はダダを捏ねてる子供みたいに、ブンブンと首を振った。


「嫌です。それにあんな小さい物、見つけられる訳ないですよ。」


「でも…」


「……怖いから嫌です。あそこ、何か出るって有名じゃないですか…」


ちょっとだけ泣きそうな顔をしている先生と目が合う。


私は思わず笑ってしまった。


そんな私の様子を見てなんだか少しホッとした顔をすると、先生は車を走らせた。


予想通り…というか、当たり前のように先生の家に着く。


去年の夏出て行った時となんら変わらない部屋の様子に、私は何故だか少しホッとした。


先生はバタバタと寝室に入っていくと、綺麗に畳まれた服を持ってすぐに出てきた。


「まだやることがあるので、学校に戻ります。


お風呂でも入ってサッパリしときなさい。」


ハイと頷くと、先生はニコっと笑って私に服を手渡した。


「じゃあ行ってきます。」


「いってらっしゃい。」


先生は慌しく家から出て行った。


手渡された服を見てみる。


初めてココに来た時に渡された、少し大きなTシャツとハーフパンツ。


私はなんだか少し恥ずかしくなって、一人でケラケラと笑ってしまった。
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