【完】私と先生~私の初恋~
その日から私は、また先生と一緒に暮らし始めた。


相変わらず先生はソファで、私はベッドで、前と変わりなく別々に眠る。


以前と同じように先生の家で過ごしていると、荒んでいた心が平常を取り戻してくる。


実家の事を考えると憂鬱になったりもしたが、私はもうあそこには戻らないんだと自分に言い聞かせた。


先生は小学校の年度末で、忙しそうに過ごしていた。


卒業生の副担任になっていたようで、帰宅も夏休みの時より大幅に遅くなっていた。


そんなあんまり顔を合わさない生活をして5日後。


卒業式も無事に終わり、小学校は今日から春休み。


久々に少し早く帰ってきた先生と夕食を食べ終えて後片付けをしていると、先生はちょっと真剣な声で私を呼んだ。


返事をして、先生の前に座る。


「明日、早苗さんのお母さんに会いに行きますよ。」


「え!?」


私は驚いて聞き返した。


「…母に…ですか?」


「はい。やっぱりこのまま、何も言わずにいるのはちょっと気が引けますし。」


体の奥底が、嫌悪感でゾワゾワする。


「でも…あの人には何も言わなくて、このままでもいいと思うんですけど…」


「やっぱりそういう訳にも行きませんよ。きっと早苗さんの事を探してるでしょうし…」


私は首を振ると、それだけは絶対に無いと先生に言った。


「探してる訳がありません。多分家で飲んだくれてます。」


「まぁそうでしょうけど…ただ、違う意味では探してるかもしれませんし…」


違う意味で探している…私はその言葉にハッとした。


あそこまで執念深く自分を傍に置こうとした母だ。


確かに心配とは別の意味で、私を探しているかもしれない。
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