「ん…」



あたたかい春の陽射しに目が覚めた。


「今何時…」



ベッドの横のテーブルに置いてあるスマホで時刻を確認する。




13時55分




「あぁ、寝すぎた」




春休みに入ってから怠けすぎている。




春休みを明けたらもう高校3年生だ。



進路とか、決めてないなぁ。



まだ先のことだし、別にいっか。




「あおいー?起きなさーい」




下からお母さんの声が聞こえた。



「はーい」



そう言えば。



今日、あたしの住んでるアパートに誰かが引越して来るんだっけ。




女の子だったらいいなぁ。



あたしはパジャマから部屋着に着替えて下に降りた。




「おはよ、お母さん」




どこかに行くのだろうか?




リビングのテーブルに鏡を置いて化粧をしているお母さんに、一応挨拶をした。




「おはようじゃないわよ。何時だと思ってるの?」



眉毛を書きながらお母さんが答える。



ちょっとお昼すぎただけじゃん。




「いいの。春休みなんだし」




ぶっきらぼうに返事をしながら、キッチンのテーブルに置いてあるお昼ご飯を食べようと、椅子に座る。




「こんな生活してたら学校始まっても起きられないよ」




「だーあいじょうぶ。起きれなかったことないし」




そう、あたしは今までの学校生活において、遅刻というものをしたことがない。




だから朝の決まった時間に起きるということについては自信があった。




「いっただっきまーす」




ふわっふわのとろっとろに調理されたスクランブルエッグを口に詰め込む。




「ん〜!おいしー!」




お母さんの焼くスクランブルエッグは格別だ。



これを食べただけで世界一幸せになれたような気になる。



「んもう。今日は1階に越して来る山城さんのお引っ越しを手伝うんだからね。早く準備しなさいよ」



あ、そっか。手伝いするって言ってたもんね。



って…




「えっ!?あたしも?」




スクランブルエッグやらご飯やらウィンナーを頬張りながら驚いた。



確かに、昨日手伝いをするというのは聞いていた。




けれど、あたしも参加するなんて聞いてないし許可していない。




「当たり前じゃない。あんたの後輩になる子なのよ?葵と同じ、若葉高校に入学する子なんだから」




入学?




「新1年生なの?」




「そうみたいよ。新1年生の男の子ですって」




男の子かぁ。




それなら…。




「関わることもなさそうだし、あたし行かない」




1年生でしかも男の子って…絶対関わる機会ないじゃん。




「何言ってるの。そんなこと言ってないで、14時半には着くみたいだから、それまでに準備しておきなさい」




「えー」




めんどくさ。




「いいわね?」




念を押すお母さん。




「んー。わかったよ」




残りのおかずを口に入れてぶっきらぼうに返事をした。





「ごちそうさまー」




食べ終わった食器を片し、お茶を流し込む。




はぁあ、めんどくさいなぁ。
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