鍵を閉めて下に降りると。




本当に偶然なのかと疑うくらい、また偶然、光がいた。




でも今日は1人じゃない。



光はアパートの階段の手すりに向かい合っていて。



その手すりにもたれかかっているのは酒井さんだった。



なんだか真剣な顔つきで話す酒井さん。



それに対して光は。




困ったような、不機嫌のような、曖昧な顔をしていた。




ガタッ




2人の話の内容が気になって、手にスマホを持っていたことを忘れて落としてしまった。




そのせいで。




2人がハッとしてあたしを見た。




「…」




「…」



あたしと光はお互い見つめ合って黙り込んでしまったが、酒井さんはまったく興味がなさそうにタバコを吸い始めた。




「あ、あはは、すいません、話し切らせちゃって。
もう行きますから」




不自然に笑ってダダダと階段を降りて、酒井さんの後ろを通り過ぎようとすると。




ペシッ




「えっ…?」




酒井さんに腕を掴まれた。




「光が話したいことあるって」




「え、あの、あたし買い物行かなきゃ…」




「ってことで俺が買ってきてあげるよ、なに?」




「いや、あたし行くんで…」




「はやく」




「…お醤油…」




酒井さんの圧迫感に勝てずに、お金を渡してしまった。
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