解けない恋の魔法
「入るよー」

 コンコンコンと小気味よく扉がノックされ、着替え終わった宮田さんが再度登場する。
 私もそのときには着替え終わっていて、自身を鏡で確認しながら大丈夫だろうかと心配していたときだった。

「うん。やっぱり似合うな」

 宮田さんのその言葉が私の不安を少しばかり軽減してくれる。
 似合っているかは自分ではわからないけれど、ドレスと靴は見事にマッチしていた。
 そして鏡に向かう私の後ろから、この前もつけさせてもらったゴージャスなネックレスを彼がそっと私の首元に飾る。

 やっぱり最上梨子の世界は綺麗だ。
 こんな私が着ても、首から下はパーフェクトに仕上がっている。

 「素敵だよ。可愛い!」

 同じように鏡に目を向けていた宮田さんが、私の後ろでうれしそうに笑うのに気づいて後ろを振り返った。
 そんなことを言う彼だって、パーティ用に着替えてきたスーツはとびきりお洒落だ。

 えっと、このタイは……何て言うんだっけ。
 あ、そうだ。思い出した。――『アスコットタイ』
 フォーマル過ぎず、彼の首元をお洒落に演出しているアイテム。

 あぁ、こうやって見ると、彼本来が持つキリッとした容姿とスーツが一体化していて、すごく似合っている。
 ……カッコイイな。


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