解けない恋の魔法
「でも、事務所で試着したときには、ひと言もそんなこと言わなかったじゃないですか。あのとき、私の体のサイズでも入るドレスを出してきてくれただけだとばかり……」

 このドレスを試着する前、宮田さんは私の肩と腰に触れて体格を目で測っていたはず。
 あの計測の元、このドレスが選ばれたんじゃなかったの?!

「恥ずかしかったんだよ。特定の人をイメージしてドレスを作ることなんて今まで散々やってきたのにね。好きな女性に着てもらうために、ドレスを一から制作したのは初めてだった。でも……君のために作ったよ、って堂々と口にするのは、いざとなったらなんだか照れくさくてさ」

「ちょっと……待ってください」

 信じられない。
 本当に私をイメージして、一から作ったって言うの?

「いくらなんでも、出来上がるのが短期間すぎます。私と出会う前からデザインを描いていたとしか考えられませんけど……」

 私の存在など関係なしにデザインが描かれていたならば、私をイメージして……というには語弊があると思うけれど。


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