解けない恋の魔法
「デザインは、朝日奈さんと出会う前に描き終わってたよ」

「……え?」

「ほら、雑誌。あの紙面の中の朝日奈さんを見ていたら、このドレスのデザインがどんどん頭に浮かんできちゃってね」

 そうか、あの……雑誌。
 袴田部長に騙されて受けた例の取材のときのやつだ。

 でも、ちょっと待って…。
 あの雑誌の中の私を見て、デザインを描き始めたっていうの?
 あの時点では、私たちがこうして仕事上繋がりができるなんてまだわからなかったのに。

 宮田さんのほうから私に接触を試みたならまだしも、最上梨子にブライダルドレスのデザインを依頼するためにアポを取って接触したのは私のほうだ。

「朝日奈さんと初めて会ったとき……大袈裟かもしれないけど運命だと思った。僕が一目見て、想像を掻き立てられる女性が雑誌の中にいたと思っていたら、その一週間後に実物が目の前に現れたんだから」

 にわかに信じがたいことを、宮田さんの口から語られる。
 私は唖然と聞いているしかできないでいた。


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