解けない恋の魔法
『場所さえわかれば、緋雪ひとりで来れるよね?』

「え?」

『場所はあとでメールしておくから、おいで?』

「でも……お邪魔ですし……」

『挨拶するくらいなら別に邪魔にならないよ。それに、僕が緋雪に会いたい。顔を見られないと元気が沸いてこないからさ』

 結局。僕に元気を分けて? なんて言う彼にほだされてしまった。
 十五時には行きます、という旨を伝えて通話を終える。
 最近の彼は、なにもかもが甘い感じがして参るなと思いながら、その場でスマホを握り締めた。

 家から持って来ていたクリーニングのかかった香西さんから借りた服。
 それをロッカーから取り出して、私は会社の外に出た。

 時計を見ると、十四時を少し回ったところだ。
 宮田さんからショーの会場である場所の住所と地図がメールで送られてきていたけれど、私は有名パティシエのいる洋菓子店へ向かった。
 そこで私なりに大奮発をして、高価な菓子折りを手土産に買った。

 手土産なんかで、あの夜の失態がなかったことになるとは思っていないけれど、私から香西さんへのせめてものお詫びのしるしに。


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