解けない恋の魔法
「もしもし。おはようございます。

 スマホの通話ボタンを押すと、私はそっと自分のデスクを離れ、誰もいない廊下へと移動した。

『緋雪、ごめん。今日ちょっと……予定変更できる?』

 焦った様子の彼の声に、何かあったのだとすぐに察しがつく。

「どうしたんですか?」

『香西さんのスタッフで急病の人が出たらしくて。僕に手伝ってくれないかって、香西さん本人から連絡が来たんだ』

「え?!」

『香西さんはお世話になってる人だから協力したい。緋雪と一緒に会場まで行くつもりだったけど、僕は今から向かわなくちゃならないんだ』

 今日は、宮田さんと一緒に香西さんの元を訪れる予定にしていた。
 だけど……宮田さんが、そのスタッフの代理を?

「わかりました。私のことは気にしないでください」

 お詫びや服を返すのが遅くなるのは、心苦しいけれど。
 今日はこういう緊急事態なのだし、私のことなんて後回しになって当然だ。

 私の用件は、また近日中に香西さんの事務所を訪ねればいい。
 なのに……


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