解けない恋の魔法

 声質までいつもより低音になっている。
 自然とこんな声と口調になれるのだから、どちらの宮田さんが本当の宮田さんなのか、わからなくなってくる。
 そんなことを思いながら、二人が名刺交換するのをただぼうっと見つめていた。

「今日は……最上さんは?」

 一緒に来ていると思ったのか、部長が不思議そうに最上梨子の姿を何気なく探している。

「今日は私が最上の代理で見学に来ました。最上は……わがままなところがありまして、外に出ることを嫌いますので」

 わがままなのは、あなたです。
< 50 / 280 >

この作品をシェア

pagetop