解けない恋の魔法

「そうでしたか。最上さんが、ご自分の目で見てみたいとご要望されたのかと思ったんですが。私の勘違いですね」

 だいたい部長が、こんなところをたまたまフラフラと歩いているわけがない。
 受付の誰かに、私たちが館内を見て回ってることを聞いたのだろう。
 ……最上梨子も来ているかも、と考えたのかもしれない。

 上司として挨拶や話をしなくてはと思ったのか、はたまた単純に最上梨子の容姿を見てみたいと思ったのか、理由は定かではないけれど。

「あのぅ……朝日奈はちゃんとやれていますか? 最上さんとは同じ女性同士ですので、仲良くやれないと仕事もうまくはいかないと個人的には思ってますので」

 部長は柔和な笑みを浮かべながら、なんとなく眉尻を下げる。

 私のこと、この仕事のことを、心配してくれての発言だ。
 こういうところは上司として、大人の余裕というか、人としての器の大きさを感じさせられる。
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