俺様とネコ女
「ご馳走様でした!ありがとう!」

さすが社会人。わたしたちのお会計も一緒に支払ってくれた。4人揃って店外に出て、目の前で男2人が小声で話しているのが聞こえてくる。

「コウ、お前本当に2軒目行くのか?」

「ああ」

「なあマジで?」

「何か問題あるか?」


声をひそめた会話はここで終了し、直哉さんが振り返った。


「こころちゃんごめんね。俺付き合えない」

「うん。私も。死ぬから確実に」

そんな言葉を残して、美咲と直哉の飲めない2人は駅に歩いていった。


「で?」

上から視線が降ってくる。無表情に言ったコウは、想像以上に長身で、スタイルもよくて。黒のスリムスーツをサラリと着こなしてて、趣味のいいシンプルなネクタイ。

ちょっと、ヤバい。大人の色気がハンパない。

「バー連れて行ってよ。とにかくお酒が美味しくて高い店」

「お前金持ってんのか?」

「私は負けない。コウに奢らせる」

「まあ、泣きつくなよ」

クイ、アゴでついてこい。彼の行動一つ一つがかっこよくて、ますます腹立たしい。


でも大抵の男のように、チヤホヤと甘やかされないのが逆に心地いい。コウがそんな男だったら、居酒屋の前で間違いなく解散していた。
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