俺様とネコ女
「では最後、人事部長お願いします」

配っている間も会議は進行していく。議長を務める常務の一人から指名され、小さく咳払いした人事部長が立ち上がる。


「えー。今年度の本社異動につきまして、皆様にご報告させていただきます。今年度は赤澤航に決定いたしました。尚、異例の早さですが、本人の能力を鑑みて問題ないと判断致しましたので、主任に昇格させることとします」



何?


何?




パニックだ。



手に持っている書類を、ばらまきそうになった。



赤澤航って、コウだよね?




本社異動って言った?



役目を終えた私は、この後会議室を片付けないといけない。

全員が退出するまで、部屋の片隅で待機していなければならない。


赤澤航、赤澤航、赤澤航…


何も考えられず、ただ、コウの名前だけを繰り返す。唐突すぎて、事情が飲み込めない。

理解できない。理解したくない。


立っているのがやっとだ。


「上野さん。異動の件はまだ内密にお願いします。今ここにいる人達しか知りません。本人には来月の5日に内辞を出します。くれぐれも口外しないように」

会議が終わり、釘を刺して退出した専務に、深々と頭を下げる。



どうしよう。



どうしよう———・・・


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