俺様とネコ女
「向こうで住むところ、お前決めていいから」

「え?そうなの?」

「忙しくて余裕ない。頼めるか?お前なら安心して任せられる。お前とは趣味も合うから」

「うれしい。この指輪といい、誕生日のネックレスといい、ほんと、コウも私の好みわかってくれてるよね」


照明に手をかざすように、左手を上げ指を広げた。薄暗い照明の下でも、光が反射して、キラキラと輝いている。


お前なら安心して任せられるだって。嬉しい。おおっと。顔がにやける。


「お前の好みなんて楽勝。サイズも完璧だろ」

「うん。聞きにくいこと率直に聞くけど、これ高かった?」

「ネコは知らなくていい」

「人間ですけど」


大げさにほっぺを膨らませてみる。コウはそれをスルーして、薬指の指輪を指先でいじる。


「くすぐったい。これいつ買ったの?もしかして異動のこと、今朝専務に言われるより先に知ってた?」

「いや。俺、今日一日仕事してない」

「え?転勤になったらしなくていいの?」

「アホか。引継ぎ早くしろって専務言ってたろ」

「あ。そうだったね」

「仕事が手につかなかったんだ。さぼってる間、悩んで、決心して、そのまま買いに行った。言わせるな」


急に胸に熱いものが押し寄せてきた。一瞬で涙が量産されて、瞳から零れそうになる。


耐えろ私。
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