俺様とネコ女
「お帰りなさい」

玄関を開けると、ここが正座して待っていた。


「ここ、お前忠犬?」

コンビニでの怒りが一瞬で消え、笑ってしまう。手を引き立ち上がらせた。


「いたたた。足が痺れた」

痛みに顔を歪め、片足ずつ足首をぐるぐる回す女。まさか俺が出て行ってからずっとそうしていたのか?そう思うと、妙に可笑しくて、余計に笑いが込み上げてくる。


「笑うと可愛いね」

「黙れ」

可愛いなんておかしいだろ。俺にそんな要素はない。

相変わらずの女ペースを断ち切りたくて、ぶっきらぼうにコンビニの袋を突きつけた。


「ありがとう」

笑顔で受け取り洗面所に向かった。遠慮も何もない、自分の家のように振舞うここに、やっぱり顔が緩んでしまう自分がいる。

不思議で仕方ない。俺のテリトリーに女がいる。しかも自由な振る舞いに対し、一切怒りがわかない。

ソファーに座り、残りのビールを飲み干してからコンタクトを外した。ベッドサイドのテーブルに置いている眼鏡をかけ、ソファーに深く身を埋めた。
< 32 / 337 >

この作品をシェア

pagetop