秘めた恋
オフィスビルから少し離れたところにタクシー乗り場があり、
その近くに他の車とは比べられない程高級感漂うベンツが止めてあった。

オオハシさんに引っ張られるまま私は「あ、あれに乗るんですか!?」と尋ねると
運転手が降りてきて「和馬様」と恭しくオオハシさんにお辞儀をした。

「こちらの女性を乗せてドライブするから運転しろ。」
「はい。」

「ちょ、ちょっと!私、行きませんよ!何言ってるんですか!?」

すると運転手が私の方を見て「これ、お前。誰に向かって口を聞いてるんだ。
この方は・・・」と非難すると

「まぁまぁ。この女は特別なんだ。つべこべ言わない。」

そう言って私を左側の後部座席に乗せた。

なんだ?この二人の関係は・・・。

私は右側の後部座席に乗った彼に近づくと「あの・・・あの運転手との間柄は・・・?」と
小さな声で尋ねた。

すると「俺の執事だ。」と応えた。

「ええええええええ!?」

彼はただの営業の人だと思ったけど実家は、金持ちのお坊ちゃんだったとは!?

私は驚いて仰け反っていると「まぁ、気晴らしに出かけるぞ。」と言ってきた。

「あ、あのオオハシさんは仕事平気なんですか?」

「俺の場合は、大事な仕事の時だけ顔出せばあとは(部下に)まかせっきりだ。」と
満面の笑みで応えた。

「そんなことしてたらいつか営業から外されますよ!?みんな必死に青ざめた顔して
契約取ってるのに」

「大丈夫だ、俺の場合、誰も逆らわない。」

なんてこった。

でも、彼の言うことは嘘ではない。
私も彼といるとなぜか色々と抗えない、きっとオオハシさんにはそういう力があるんだ。

「なんて恐ろしい人・・・」

そう言うと彼は愉快そうに笑った。
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