秘めた恋
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外の空気が吸いたくなって昼の休憩中、散歩をしていると
森さんを見かけた。

「あ、あれ、森さんじゃない。なんであんなところに。」

私は、タクシー乗り場の方を目を凝らして見ていた。

「あ、あれ?あの隣にいる男性は・・・・。」

すると風が吹いたせいでゴミが目に入り、痛みで思わず目を閉じた。

「痛・・・」

私は片目を押さえるとよろよろとしながらオフィスビルに戻った。
すると誰かとぶつかり思わず「すいません。」と言って顔を上げると
その相手が古橋君だった。

え!?

思わず、びっくりして声が出なかった。

彼は、眉間にしわを寄せながら「どうしたんですか?」と言ってきた。

「あ、目にゴミが入って・・・・。」

私は片目を押さえながら一歩進もうとしたら、つまずきよろけた。

「わっ!」

右側に倒れそうになるのを古橋さんが左腕でがしっと私を掴み、支えた。

「え!?」

私は驚いて彼を見上げると「大丈夫ですか?向かうところが一緒なので
支えていきますが。」と冷めた顔して淡々と言ってきた。

彼の左手が私の腰を支え、彼とは至近距離となった。
彼に触れられた場所が熱くて、あまりにも緊張して心臓の鼓動も激しくなり
喉がカラカラになった。

私はその状態で搾り出すように「結構よ。」と言って彼を突き放した。
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