彼方の蒼
3−3教室に戻ると、部屋の後ろに全員の保護者を入れての最後のホームルームとなった。
倉井先生の話が終わり、解散となるや否や、クラスのみんなで記念写真だ。
集合写真から仲間同士のものへと変わり、デジカメや携帯の持ち主がわからなくなる勢いで撮りあっていると、制服を小さく引かれた。
ちょっといいかな、と堀柴サンは僕とカンちゃんを同じ階の渡り廊下まで連れていった。
「ボタンを1個ずつください」
僕とカンちゃんは同時に吹き出した。
呼び出しのシチュエーションからしてそれかなと予想はあったけど、まさかこうくるとはね。
「そんなねだりかたがあるのな」
とカンちゃん。
「今川焼でも買ってるみたい。小倉とクリームひとつずつ、みたいな」
と僕。
「角が立たなくていいでしょ」
堀柴サンは涼しい顔をしている。
口笛でも吹きそうに、口を尖らせて。
「もしかしたら片方はカモフラージュで、片方が本命かもよ?」
話の流れを用意していたのか、堀柴サンが言い終わるころには僕たちふたりのブレザーのボタンはひとつずつ、彼女の手のなかにしっかり収まっていた。
やっぱり返してと冗談めかして言っても、手を後ろに回して真面目に拒まれる始末。
「お守りにする」
と、どこまで本気かわからない堀柴サン。
カンちゃんのはともかく、僕のボタンを持っていてなにかいいことあるんだろうか。
尋ねようとして、あれっと思った。
堀柴サンも気づいた。
ボタンふたつを片手でいっぺんに握っていた。
「やっちゃったああ!」
どちらがどちらのものなのか、わからなくなってしまった。