彼方の蒼
いずれにせよ、倉井先生と話すつもりだった僕は、在校生の待つ正面玄関からの花道の隅に倉井先生を見つけた。
紺色の制服と時折目につくスーツや着物の先生や親たちに混ざっても、倉井先生のいるそこだけは凛とした気配が漂っている。
僕なんて、ぼーっといつまでも見ていたいくらいだ。
あの様子だとひととおりの挨拶は終わっていて、一時的にその場を離れてもよさそうだった。
「そーやまくん!!」
遠くからでっかい声が響いた。
なにごとかと振り返って探した先のベランダにいたのは堀柴サン。
「そーやまくん! 負けんな!! がんばれ!!」
がんばれ、がんばれ、となおも繰り返す堀柴サン。
僕に聞こえてないはずがないのに、馬鹿の一つ覚えみたいに、身を振り絞るようにしてちぎれんばかりの声で叫んでいる。
無理な発声だったのか、声が裏返っている。
聞きつけたクラスメイトもベランダにわらわらと集まってきた。
僕の姿は勿論のこと、そばに倉井先生がいることにも気づいて、ははーんって感じで薄笑いを浮かべている。
どいつもこいつも。
「惣山、いけー!! 行ってこーい!!」
「ファイト—!!」
「頑張ってー!」
みんなが知っている僕の片想い。
倉井先生とふたりきりになろうとしていることまで、なぜかばれていた。
ベランダの人だかりは後ろに立つ人が伸び上ってまでこちらを注目している。
隣のクラスや他学年のベランダにもなにごとかと人の姿が見えはじめた。
「わかった! 行ってくる!」