彼方の蒼
◇ ◇ ◇
「で、どうしよっか」
3月とはいえ今年の春はのんびりしている。
桜もまだ僕らの目を楽しませてはくれなくて、蕾の気配だけを漂わせていた。
おかげで校舎の裏手にある川を臨む土手には先客はなく、僕と倉井先生とで眺めを独占できた。
「来月には僕は倉井先生の元・教え子になるから、今までみたいな遠慮はいらないよね。つきあってるのがばれたら退学だとか先生がクビにされるとか、そういう心配がなくなる」
川面から照り返されるやわらかな白い光が眩しくて、目を細めたくなる。
春は近くまできている。
「順当にいけば僕は高校生になっているはずだ。うん。きっとなってる。自由恋愛解禁!」
僕の言っている意味がわからないはずもないだろうに、倉井先生はさっきから黙ったままだ。
「どうする? どうする?」
右から左から、顔を覗きこんでみた。
「僕ら、つきあっちゃう!?」
勢いで着物の袖から覗く指先をつかみ、両手を繋ぐ。
簡単なことだよ。先生。
うん、とひとつ頷けばいいんだ。