彼方の蒼
「そう言うと思いました」
早い間合いで倉井先生は言った。
嬉しそうな声に聞こえた。
おやっと思って見ると、打ち解けたような優しい笑顔があって、僕はどぎまぎしてまた顔をうつむけなくてはならなかった。
見つめたいのに直視できなくて、狂ったように鼓動を早めるこの心臓を持て余していて、愛しいのに苦しい。
「惣山くんならそう言うだろうと何度も思いました。瑞々しくて、それでいて人がためらうことも平気でやってのける、常識に縛られない自由な人。学生時代、美術を専攻している人と何人も知り合ってきましたし、風変わりな人も多くいましたけれど、惣山くんはそういった人たちと遜色ないくらいの個性を持っていると思います。特別であろうとしなくても、特別な光を放ってしまう人」
苦しいまま倉井先生を見た。
「そんな人から背中を押されたくないんです」
僕を目を合わせると、涙を堪えているのか目の淵を赤くした倉井先生が無理に笑顔を作ってきた。
「わかりますか」
僕は返事に窮してゆっくりと首を横に振る。
「そんな急に褒め言葉の大盤振る舞いされても、呆然とするっていうか。頭が回らないっていうか」