彼方の蒼
「どうしてそれが僕の告白への答えなんですか」
好きも嫌いもないなんて、どこまで焦らす気だよ。
「あなたは3月31日まで中学生だからです」
「おまけに進路が確定していないから?」
倉井先生は答えなかった。
代わりに、今初めて気づいたかのように唐突に話題を振ってきた。
「それ、いいですね」
僕のブレザーのボタンが取られた痕跡を言っているようだ。
気勢を逸らされながらも、僕は話に乗ることにした。
「先生が学生のころにも、こういうしきたりあった? もらいに行った?」
「ありましたね。もらいには行きませんでしたけれど」
「えー? そこはほら、勇気出さなくちゃ!」
「相手がいなかったんです」
「つきあってなくても、片想いでもいいらしいよ」
「それもなかった。好きだと思える相手があるのは素敵なこと。どんな事情があれど」
やばい、と僕は口元を押さえてうずくまる。
「一瞬、振られてもしょーがないやって思っちゃった」
流されるな流されるな、と僕は声に出しながら頭を抱える。