彼方の蒼
 カンちゃんは堀芝サンが守り抜いた秘密を推測で補い、僕に話して聞かせた。
 内山かマッキイのどっちかがひそかに僕を好きで、僕が倉井先生に熱を上げていることを知っていて、気持ちを言えずにいた。
 また、受験のストレスから、さっさと推薦入学が決まった堀芝サンを目障りだと感じていた(そんなこと僕は絶対ないと思う。友達だろ?)。
 その堀芝サンが、どういうわけか僕に急接近!
 内山かマッキイは怒って、堀芝サンを完全無視するようになった。
 友達とはいえそれまで事情を知らされていなかった(このへん推測らしい)堀芝サンは胸に渦巻くいろんな感情を殺して、内山とマッキイとの和解のため、僕とカンちゃんのもとを去った……とまあここまでがカンちゃんの想像も含まれた話だ。


「堀芝のヤツさ、今まで澄まし顔だったくせに、今日になって急にハルのこと意識してたぜ。名前だって『小柳くんとそーやまくん』って、ハルの名前をあとにしてた。女の友情なんざ、めんどくせー以外のなにものでもねえな」 
 ……でも推測だし。
「堀芝サン、うまくいくといいね」
「あいつはきっと、うまくやるよ」
 そうだよ、堀芝サンだもんな。
「むしろおれはハルのほうが心配だ。……いろいろと」
 なんで今さらそんなこと言うのさ? と聞こうとしたら、カンちゃんラップを選曲しちゃっていて、すぐに歌いだした。
 僕も知っている曲だったから、気持ちよくいっしょに歌った。
 そんなこんなで、会話が中断したまま、ふたりだけのカラオケ大会·第二部がスタートした。
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