兄貴がミカエルになるとき
トオ兄は外国人の俳優がやるように、器用に右の眉だけ引き上げてにやりと笑い、スプーンに乗せたプリンの塊を、至近距離でジッと見守っていたモンモンに差し出した。

モンモンは「あーん」と口を開け、トオ兄はその小さな口の中にそっとプリンを落としてやる。

「で、お前、今年は誰か本命はいるのか?」


あと二十日でバレンタインデーがやってくる。

クラスの女子たちの話題も「どうする、どうする? チョコどうする?」と、そればかりだ。

考えてみれば中学生なんて、背中に背負ったランドセルをまだ下ろして間もない子供なのだけど、ここから一気に異性への興味が盛り上がっていくよう、人の体はプログラミングされているらしい。

「彼氏」とか「付き合う」なんていう話題が、この時期最大の関心ごとになっていく。

私も周囲の友達も、まだ誰も〈彼〉とか〈付き合う〉といったものには無縁だったし、

どこでどうやって〈付き合う〉ことになるのか、

〈付き合う〉とどうなるのかもよくわからなかった。

私たちが校庭でボールを追いかけているときに、ひっそりとした様子で校門に向かう3年生の男女を見ると、

「ああ、あの人たちは付き合っているんだな」、と思うくらいで、

それがどういったタイミングで訪れるのかはわからなかった。

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