兄貴がミカエルになるとき
ママのまっすぐな目には言葉を封じさせる力がある。

その瞳に捉えられ、トオ兄は言葉を発せられない。

質問の意味が分からない私も黙ったまま2人を見つめるしか術がない。


「ま、いっか」

まるで魔法を解くように、ママはトオ兄を射た視線の矢をはずし、またワインを口に含んだ。

「で、恋に発展しそうなの?」

「それは今後の紗季次第かな。なんてったって、ケイトっていう強力なライバルがいるから」

「えっ、なにそれ!」
びっくりして口に運びかけたシュリンプをお皿に戻した。

「自称ダーリンのガールフレンド。でもアプローチしだいで勝ち目はある」

「これから日本に帰るのにどうやってアプローチするの? そんな障壁を見越してセッティングしたなら随分意地悪ね」

私が尋ねるより早く、ママが代弁してくれた。

「メールとか手紙とか」というトオ兄の回答に、
「それだけ?」、とアーモンド型の綺麗な目を見開いて、ママは呆れたようにトオ兄を見た。

ママがトオ兄に呆れることはめったにないことなのに。

「それにメールも手紙も同じじゃないの」
ママの攻撃は続く。

「日本から運ばれてきた直筆の手紙と電波に乗ってきたメールじゃ、全然違うよ」
トオ兄も反撃を試みる。

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