兄貴がミカエルになるとき
「ふうん。まあ確かにそれはちょっと認める。だけどどっちにしても手紙よね」

ママはワインをもう一口飲んでさらに反撃する。

「それって、すでに付き合っているとか、せめていい雰囲気が出来上がっている場合なら嬉しいけど、何もない相手からメールや手紙がたくさん届いたらちょっと引かない?」

「そんなことないよ」

「そうかしら? じゃあトオルは由美子からニューヨークの絵葉書とかじゃんじゃん届いたら嬉しい? 毎日PCにメールが入っていたら嬉しい?」

オリーブを一粒口に含んだまま、トオ兄が真剣に考えている。

ていうか、由美子さんを引き合いに出すのはどうよ、と思うけど。

「それに自分とこのブランドモデルに手を出すのもねえ」

「違うよ、ママ。手を出そうとしているのは咲季の方、いやまだ出してない。出したがっているだけだ」

私は“はあ”、と無意識にため息をついた。

2人の会話を聞いていたら、パステルカラーのほのかなときめきがフェイドアウトしていくようだった。
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