兄貴がミカエルになるとき
「54丁目のカフェ」

言葉を発しない私にヒントが投げられた。

五四丁目のカフェということは、ニューヨークに着いたその夜、トオ兄と2人で訪れたカフェ―――
その夜の会話を頭の中でたどってみる。

とお兄のお父さんとお母さんの話、ママとの関係、トオ兄がトオ兄になった理由、トオ兄がママに優しい理由、それはママのミカエルだから……。

ああ、そうか。とても大きな約束をした。

それも私からお願いをして。

「わかった。もう倒れないよ。トオ兄の寿命が縮んじゃったら、ずっと守ってもらうっていう約束、果たしてもらえなくなるもんね」

そう言うとようやくトオ兄の表情が緩み、「何かあったらすぐに電話しろ」と枕元に携帯電話を置いて、今度は静かに私の部屋を出て行った。

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