兄貴がミカエルになるとき

「ママはバルバリーの新しいミューズと騒がれ、世のファッションマニアを熱狂させたわ。マンハッタンにはアキを真似た女がうじゃうじゃ現れた。でも当の本人はその状況を認識する暇もなく、時給６ドルの渦潮っていうジャパレスでアルバイトしてたのよ！
Ｋ.Ｌのエロデザイナーのオヤジは毎晩その店に通ってアキを口説いて、でもって、そしたらそれに対抗してバルバリーの人間まで渦潮に行きだしてびっくりよ。古臭い日本食レストランが、急にファッション業界の人間が集まる店になっちゃっったんだから」

その後Ｋ.Ｌが起用したモデルは、アメリカ人では珍しく身長が170センチに満たない小柄で華奢な女性で、彼女はあっという間にスーパーモデルへの階段を上っていった。

業界ではＫ.Ｌがママの面影を求めた結果だともっぱらの評判だったらしい。

「アキとは迫力が全然違ったけどね」

ティムさんが悔しそうに言う。