兄貴がミカエルになるとき

-3-

8月27日。

相変わらずミンミンゼミや油蝉たちがミンミン、シャーシャー鳴き続けているが、その声の中にツクツクボウシの声が混じっている。

そんな風に、強い日差しにうんざりした顔で汗をぬぐってみても、思いがけなく受け取ってしまう秋の合図。

それは空の色だったり、かすかな空気の匂いだったり、肌にあたる日差しの強さだったり、差し込む光の色合いだったり。

そしてある時、すとんと秋に変わって、どうしていいかわからなくなる。

「昨日まであんなに暑かったのに」なんて、ぐずぐずつぶやいてみたりして。


空を見上げた。

青く、青く、青い空に、白く大きな雲が浮かんでいる。

まだ大丈夫。夏の証拠を無理やり見つけて、私はちょっとほっとする。

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