兄貴がミカエルになるとき
「ハワイ? 僕もハワイに行こうかと思っていたんだよ」

げっ! と思わず叫んだ。もちろん心の中で。

だけどもう少しで声に出しそうだった。

そういえば年末には著名人や芸能人、そしてお金持ちがわんさかハワイに押しかける。

三品家だってお正月はハワイかも、なんて考えがなぜ及ばなかったのか。

「いつもハワイで年越しするんだけど、今年は親父が仕事で忙しいからやめたんだ。でも季咲良さんが行くなら僕だけでも行こうかな」

え! それはやめて! と叫びそうになったが、その声も心の中で処分した。

「でも家族で行くから会えないよ。多分観光しまくっているから」

「そっかあ。じゃ、やめる」

大して本気ではなかったらしく、三品君はあっさりハワイに行く提案を引っ込めた。

ひとまず安心して、置いたままになっていたカフェオレを飲もうとすると、表面に薄い膜がかかっていた。

いったん持ち上げたカップをまた下ろし、スプーンで薄膜を避けてからカフェオレを一口飲んだ。
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