兄貴がミカエルになるとき
「ただ?」

「ごめん、嘘ついた。駅前で君が落とした本を、そのとき僕はまだ読んでいなかった。君が落とした本を見てから読んだんだ」

「どういうこと?」

「花園さんはいつも君の話をしていた。『背がうんと高くて、地味にしているのにどうしても目に飛び込んでくる』って。さっきも言ったけど、そんなに彼女が気になる女の子ってどんな子だろうって気にかかるようになった。あるとき、駅の近くで重そうな本を開きながら歩いてくる君を見かけたんだ。すぐに君が季咲良さんだってわかった。背がうんと高くて地味にしているのに目に飛び込んでくる――思わず立ち止まって君を目で追った。君は全然気付いていなかったけど、僕はかなり君の近くにいたんだよ。そして君が落とした本のタイトルをとっさにチェックして、その後すぐに同じ本を買って読んだんだ。面白かった。君にもっと興味が湧いてきた」

「じゃあその後の2冊は?」

「あれは本当に偶然」
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