兄貴がミカエルになるとき
撮影を終え、ホノルルを12月29日に発って30日に成田に着いた。

家に着く少し前から私たちの気配を察したモンモンが吠え、その鳴き声を聞いたトオ兄はダッシュで家の中に駆け込んでいった。

私とママが少し遅れて到着した時にもまだトオ兄はモンモンを抱きしめて再会を喜び、モンモンも興奮して今にも吹っ飛びそうな勢いで尻尾を振りまわしていた。

「お帰り」

パパはママの荷物をリビングに運びこんだあと、冷蔵庫から缶ビールを1本取り出して、ソファにどさりと座わったママに差し出した。

そしてプシュッという音を立てて缶を開け、ビールを美味しそうに飲む妻の姿を、目を細めて眺めていた。

「お疲れ様。咲季はダーリンに会えたかい?」

「会った。でもガールフレンドがいた」

「そうか。でも咲季には新しいボーイフレンドがいるものな」

ママは口元の缶を一旦下ろし、トオ兄はモンモンの首を揉んでいた手を止めて私の顔を見、私はパパを見る。

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