兄貴がミカエルになるとき

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12月31日。大晦日。


季咲良家では毎年12月29日はみんなでお正月の買い出しをして、30日からママはおせちの準備、私たちは大掃除を始め、31日の午後4時にはすべて終了させることを目指して動く。

けれど今年はギリギリまでハワイに行っていたので、おせちは幸ちゃんのママがりっぱなお重を5つも用意してくれた。

掃除もパパが留守番しながらほぼほぼ済ませてくれたおかげで、それぞれの部屋を掃除すればよかった。

午後6時半には今年最後の晩餐を囲み、7時からはお約束の紅白歌合戦を家族そろって見始めた。

「ねえ、来年はお小遣い上げてくれる? モデルで忙しくてアルバイトはできないし、モデル料ももらってないしさ」

「ママ、僕のギャラも、もう少し上げてくれないかな。スケジュール調整にマネージャー役に出張の手配に通訳に運転手、相当働いている割にはギャラが低すぎる気がする」

 新年を前に兄妹で翌年の金銭交渉にあたるのも慣例になっている。

少しお酒が入って、ママの心が寛大になり始めた頃が交渉時だ。

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