兄貴がミカエルになるとき
「もちろん、自分の気持ちはわかっている」

トオ兄がようやく発した言葉にママとパパは再び笑を交わし、私はぽかんと口を薄く開けたまま、突然時が止まった。

まるで一時停止ボタンでストップした、再生映像の中にいるうに。

「もうずっと前からね。ただこの状況って結構センシティブだから、どうしたらいいか考えていたのに、ママとパパはせっかちだな」

今度はトオ兄とママとパパが3人で笑みを交わしている。

完全なる蚊帳の外。

私だけが静止画面の中から抜け出せず、そこからみんなの様子を覗いている。

「咲季」、とトオ兄に声をかけられて、ようやく画像が動き出した。

「というわけだから、前にも言ったが覚悟しておけ」

カチッ。

再び停止ボタンの音がした。

全く意味不明。
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