兄貴がミカエルになるとき
周囲のお調子者は、今度はリカコにヒューヒューとヤジを飛ばす。

「これ……」

でも美奈ちゃんを怯えたように見上げるリカコの瞳は、とてもモテモテ田口先輩からチョコをもらっためでたい女子には見えない。

「先輩からあなたに返しておいてって、昨日頼まれたの。自分で返してくださいって言ったのに面倒だからって。田口先輩もあなたからのチョコレートはいらなかったみたいね」

とどめに「残念ね。じゃ、それちゃんと返したから」と、にっこりゆったり微笑んでから、美奈ちゃんはくるりと踵を返した。

ヤジがピタッととまり、今度は教室が一転して静まり返った。

いた過ぎる状況にからかえないというのもあるが、ふんわりした雰囲気でクラス一の癒し系とされている美奈ちゃんの意外な迫力に、皆、圧倒されたと言ったほうがいいだろう。

「本当はこっそり返してあげるつもりだったけど、あんまり頭にきちゃったから」

私たちのところに戻ってきた美奈ちゃんはそういって「ふふ」といつものように、ふっくらとした頬に可愛いくぼみを作った。

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