兄貴がミカエルになるとき
それから一週間後の図書委員の日。

授業が終わると一人で教室を出た。

真田とはバレンタインの揉め事があってから、何も話していない。

リクレーションルームに向かって歩いていると、バタバタと後ろから廊下を走ってくる騒がしい音がして、振り返ると予想通り真田がいた。

「あのさ」、という呼びかけを無視して歩き続けた。

すると私の前に回り込んできて、「あのさ、ごめん」と頭を下げた。

いつものお調子者のノリはなく、真面目な顔で「ごめん」と、更にもう一度頭を下げた。

「本当はチョコレートもらってすごく嬉しかったんだ。でも、冷やかされて恥ずかしくなって、とっさにあんなひどいこと言っちゃって。本当に嬉しかったから、喜んでいるのを馬鹿にされたみたいで余計恥ずかしくなってさ。桜田が言ったように、俺は意気地なしだって思った。スポーツマンとしても恥ずかしいって。友チョコ貰ったんだ、嬉しいよって、そのまま言えばよかったんだ。本当にすまない」

その男子、きっと本気じゃないよ―――

昨日のトオ兄の言葉がマカロンのサクサクっという音と一緒に舞い戻ってきた。
< 32 / 307 >

この作品をシェア

pagetop