兄貴がミカエルになるとき
タンスから、まだ出番には間のあるはずだったワンピースの水着を引っ張り出す。

宝花学園制定の、何の変哲もない紺のスクール水着だ。

リビングからはボコボコと言う音と一緒に、香ばしい香りが漂ってくる。

苦いコーヒーはまだ美味しいとは思わないけど、この香りは大好きだ。

水着に着替えてビングに姿を見せると、4人がパチパチと拍手を送ってくれたので、私も調子づいて皆の前でくるんと回ってみせた。

こういう時だけノリの良い家族は即座に「おおー」と反応してくれる。

コーヒーを運んできたついでにパパがテーブルの上のポータブルラジオのスィッチを入れた。

チャンネルはAFN。

曲名は知らないが、よく耳にするノリの良いポップスが流れてきた。

えい、さらに調子に乗って踊ってやれ。
やけっぱちだ。
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