兄貴がミカエルになるとき
私も生涯最初で最後になるはずのモデルのまねっこを楽しんで終え、あとはミュージカルを見てシナボンを食べて帰国して、パパにお土産話を聞かせてあげようと考えていた。

しかし予想に反し、シェリル側の受けはすこぶる良くて、次のシーズンの契約があっけなく決まってしまった。

同時にリチャードが事前に根回ししていたモデル事務所への所属も決まり、翌々日にはゲリラ的な勢いで、広告写真の撮影まで行う運びとなった。

シナボンを食べてミュージカルを見る間もなく、私は突然トップブランドのモデルになってしまったのだ。

それでもシェリル以外の仕事が入ることはないだろうし、放っておけばフェイドアウトして通常の生活に戻るだろうと、家族全員のんきに構えていた。

ところが、これまでとはがらりと雰囲気が変わったシェリルの広告は、これまた予想外の反響を呼び、私は「シェリルの未知なるミューズ」とまで祭り上げられて、ファッション業界に急浮上した。
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