兄貴がミカエルになるとき

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中学を卒業し、モデルという身の置き所が加わってから、私は衣をぺろりと一枚脱いだかのような軽さを感じていた。

身長はまた3センチ伸びた。

1年前の私だったらブルーになって、どうやって背を縮めて歩こうかと悩んでいたはずだけど、今年はそれほどでもない。

178センチなんて大して大きくない世界があるのを知ったから。

モデルになったことは家族と幸っちゃん以外は誰も知らない。

だから相変わらず学校ではデカいとからかわれ、街を歩いていても「あの子、大きい」という視線が突き刺さってくる。

でも自分が特別ではない場所があるから、もう胸がつぶれるほどには落ち込まない。

それにしても日本にいると普通じゃなくて、海外のモデルの中では普通。

普通ってなんだろうと、時折考える。

周りの環境によって普通が変わるなら、結局普通なんてないってことじゃないか。

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