兄貴がミカエルになるとき

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終了式が終わっても、クラスメートたちはもらったばかりの通信簿をのぞいて、皆きゃあきゃあ盛り上がっていた。

窓の外でギュイギュイ鳴いている尾長鳥よりもやかましい。

そんなクラスメートをしり目に、立ったまま机の上の文具をカバンに詰め込んでいると、突然背中に衝撃を受け、そのはずみに手にしていたノートと通信簿が床に放り出された。

それもこれみよがしに開いた状態で。

これみよがしに、というのは、私の通信簿は頑張った甲斐あって、自分でも驚くほど5がたくさん並んでいたからである。

振り向くと、色付きリップでてらてら滑った唇を歪めてリカコがにやけていた。

「もう、でかすぎて邪魔。ぼーっと立っていないでよ。ぶつかっちゃったじゃない」

ああ、また嫌がらせか。

ちぇっ、と下品に舌打ちしそうになるのをぎりぎりこらえた。

リカコを無視して慌てて落ちたものを拾おうとすると、その姿を見て彼女の取り巻きがクスクス笑った。
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