兄貴がミカエルになるとき
入学してからの3カ月半は学校に慣れ、クラスに慣れ、新しい生活に慣れることに明け暮れて、あっという間に過ぎていった。
入学時に校庭に咲き誇っていた桜の花が散ったあとにはこれ見よがしの若々しさを湛えた新緑が広がっている。
そして気付けばにぎやかなセミの声に包囲され、私たちの制服も夏服に変わった。
量子も原子も、粒子までみんな煮詰まったような空気の中に、時々青々しい草の匂いやクチナシの花の香りが混じってくる。
甘ったるさをまとった夏の風が通り過ぎていき、私たちは高校最初の夏休みを迎えようとしていた。