西山くんが不機嫌な理由





白い吐息と、ほんのり桜色に染まる頬と鼻の頭。


寒いのが苦手な西山くんを、迷惑を承知でわざわざ寒天候の中呼び出したのにはきちんと理由があった。



「西山くん、手出して!」



青年は訝しげな視線を向けてきつつも、何も言わずに片手を差し出す。



「違う違う!両手だよ。手のひらは下に向けてパーつくって!」

「…………にやけてる」

「ふへへっ、気にしないでおくれよ」



不思議そうな表情の西山くんが、言う通りに両手をこちらに向ける。



後ろに隠して置いた紙袋から目的のものを取り出して、西山くんの細長くて真っ白い手に被せる。


紺青に細い雪の模様の一本の線が描かれたそれは、思っていた通り冬生まれの彼によく似合う。



「…………手袋」

「そうだよー!西山くんハッピーバースデイ!アーンドハッピーニューイヤー!!」

「…………あぁ」



納得するように小さく頷く西山くん。


よもや自分の誕生日をすっ飛んで、今日がお正月だと気が付かなかったわけではあるまい。




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