西山くんが不機嫌な理由





「あぁ、もう。分かった分かった。今度水あめ買ってやるから。な?」

「…………行きます」

「よしきた。それじゃあ宜しくな」



やけに分厚いノートをこちらに押し付け、女の住所が記してあるというメモを追加で渡された。



甘い食べ物に耳が惹かれて、即座に頷くものではなかった。




なんて。今更後悔しても遅いけれど。







駅から出て、地図を頼りに道を進んでいく。




担任の言っていた通り、自宅からそう遠くはない距離にある目的地。



これくらい近いのなら、中学が一緒だったとしても可笑しくはない。




半ば意識は眠りつつ、ゆったりと足を動かす。




と。



「おばちゃーん!アイスちょーだい。ポッキンアイス!!」



近所の70過ぎのおばあさんが経営している小さな駄菓子屋を通り過ぎる際に、中から聞こえた幼い女の声に足を止める。




何の気なしに様子を窺っていれば、買ったばかりのアイスを美味しそうに頬張る、丁度踵を返してこちらを向いた女と視線が交わった。




無邪気な明るい声色からして小学校高学年を見当していたが、どうやら外れたらしい。




数で表して3m先に立っている女は、最低でも中学生前後の背丈。俺より頭いっこ分小さいのは明確だ。



だけど顔立ちは幼いから、やはり小学生か。




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