西山くんが不機嫌な理由





俺が何を考えているのかを知らずに、不思議そうに首を傾げて、閃いたようにぱっと笑う。




閉じていた蕾が一瞬にして花開くように。



あまりにもあからさまな表情の移り変わりに度肝を抜かれた。



「ねえ!お兄さん名前は?」



てくてく歩み寄り、こちらを下から覗き込んで口にする。



その言葉が自分に向けられていることに気が付くのに、暫しの時間を要した。



「私凪!呉羽凪っていうの」

「…………」

「お兄さん。おもちは好きかい?」

「…………は、」

「ちょっとここで待っててね。絶対だよ!」



突拍子もない問い掛けにきちんとした返答もままならず茫然としていれば、そんな俺に構うことなく「おーばーちゃーん。雪見大福ー!」元気な声を張り上げる。




するとひょっこり、姿を現した駄菓子屋のおばちゃん。



すっかり白に染め上った長い髪を後ろで高くお団子にまとめ、かなり背が低い。




笑顔がチャーミングでよくおまけをもらえるらしく、子供達から大人気とのこと。



「はい、お嬢ちゃん。120円ね」

「おうよー。えっとねー、いち、にい、さんのしーの、ごのろくのななのはーちの、くーのとうの…………うぬっ」



白とピンクの水玉模様で彩られた財布をあさりつつ、突然奇声を上げる。




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